オレシャカ

勝ち負けとはなんぞや

「今日は、生まれてこの方、一度も「負けた」と思ったことがない3名の方をお迎えし、負けっぱなしの我々をよそに、”勝負”について徹底討論していだたきます。それではさっそくですが、最初のテーマはこちら」
 司会者の背後に備え付けられていたボードが、裏方の仕事によってひっくり返った。そして、でかでかと書かれたテーマがあらわれる。
「知力、筋力、権力、若さ。などなどすべてにおいて自分より勝っている相手に勝つ方法」と、司会者は力を込めてテーマを読み上げた。「非常に難しいテーマといえますが、ここにいる3名の方々ならば、きっと、我々に答えを教えていただけると、……期待しております。えへへ」
「答えは簡単です」
 さっそく、3人のうちの1人、日本はおれが背負っている(仮名)さんが元気よく口を開いた。観覧に訪れている一般市民から、盛大な拍手が贈られた。
「私の答えはズバリ、人にたよる。これです。僕は、力を貸してくれるみんなの力があって、いろいろな壁をつきやぶってきました。一人の力で敵わないのなら……」
「ちょっといいかな」
 日本はおれが背負っているさんの話を遮ったのは、3人のうちの一人、凶器やでおれの才能は(仮名)さんであった。
「”すべてにおいて”って書いてあるんだから、当然、この敵のほうが友達も多いだろうし、協力してくれる味方も多いんじゃないの? 問題はそんな簡単なことじゃないよ」
「そうだそうだー」
「おれは友達いないぞー」
「ちょうしのんなー」
と、一般市民からヤジが飛ぶ。
「なるほど、それでは凶器やでおれの才能はさんの意見をうかがってみましょう」と、司会者。
「おれも、もう答えは出している。まず、夜中、この敵の家に忍びこみます。そして素早く敵が寝ているところへ走り込んで行って、寝込みを襲って殺す。これしかない。だって、すべてにおいてこっちが劣ってるんでしょ。敵を根っこから引っこ抜く。それしかないって」
 この言葉に場が静まり返った。しかし、すぐに司会者が「おっとっと!」とずっこけることで、なんとかことなきを得た。
「あんたは道徳の授業がある日休んじゃったのかい? 少なくともおれは、敵が死んだからといって、勝ったとは思わないな」
 と、新たに発言したのは、100年に一人の男(仮名)さんであった。
「だから、物理的に無理なんだから。おれは敵が死んだら大喜びするよ。あんたもするだろ? 大喜び」と、凶器やでおれの才能はさん。
「そうだぞー 大喜びだぞー」
「大喜びかー どうなんだー」
「大喜びなのかー 聞かせろー」と、ヤジ。
 100年に一人の男さんは、それについて答えるべく、口を開いた。
「いろんな気持ちあるよ。大喜びする気持ちもあるよ」
「なら、おれの答えに賛成じゃん」と、凶器やでさん。
「敵がいなくなったら、ちょっとは嬉しい。でも、殺すのは嫌だ」と、100年さん。
「ならおまえが死ねー」
 ヤジは、さらに過激さを増してゆく。100年さんは怒鳴り声をあげた。
「死ねっていうお前が死ねよ!」
 さっきまでヤジを飛ばしていた一般市民たちは、そんなに怒られるとは思っていなかった。すぐに弱気になった。
「そういうこと言うなよー」
「ごめんー」
100年さんは話をつづけた。
「すべてにおいて勝ってるってことは、すべてにおいて自分と違ってるっていうこと。てことは、敵はおれとは違うことを考えているということだ」
 さっき怒鳴られた観客は、もうなるへそなるへそ状態であった。
「おれと同じ道をいく人間は、人っ子一人いないんだよ。ひとりぼっちさ。おれたちゃ」
「そうなのかー ひとりぼっちなのかー」
「狼なのかー」
「狼なやつもいるし、ウサギなやつもいるし、タヌキなやつもいるんだよ」と、100年さん。
「100年に一人の才能さん、結局、どうしろっつーの?」
 と、ここで司会者が口をはさんだ。100年に一人の男さんは、結局どうすりゃ勝てるのか、答えが出ていないまま喋っていた。とりあえず「生きろ!」と叫び、座った。

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ここへ来て、まさかのもののけ姫ですね。

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