隠し剣・面、おばあちゃん家のカエル
剣道インターハイ、決勝戦。昨年の覇者・五十嵐くんとチャンピオンの座をかけて争うのは、大方の予想を裏切り、初出場の中山くんだった。中山くんはこれまで防具を一切身に付けず、『獣の動き』と書かれたTシャツを着用し、相手をかく乱する戦法だけで勝ち上がって来た男。危険だから防具を着用せよ、言われても聞く耳を持たない彼は、痣だらけだった。ここまで勝ち上がってくるまでに、すでに何発か身体をひっぱたかれている。そのたびに審判の、
「ほら言わんこっちゃない!」
という悲痛な叫びが体育館に響き渡っていた。
試合前、昨年の覇者五十嵐くんは、中山くんにこう告げた。
「僕はスポーツマンとして、相手の防具を狙う練習しかやってない。君が防具をつけないとすれば、僕の剣がどこを狙うのか、僕でもわからない。それでも防具をつけないの?」
中山くんは意図的にテンションを上げ、叫んだ。
「防具なくても同じとこ狙えよ! なんて嫌なやつだ!」
「はじめ!」
開始の合図とほぼ同時に、スポーツマン・五十嵐くんの剣が一閃。彼は正確に中山くんのけつをひっぱたいた。中山くんは叫び声をあげた。
「ぐわああ!」
「はい! 言わんこっちゃない! 言わんこっちゃないよ!」
剣道では、面(おでこ)、胴(おなか)、小手(手の甲)のいずれかをひっぱたかない限り、ポイントにはならない。ましてや身体の後ろなぞ攻撃しても無意味。試合は引き続き続行されるのである。一旦仕切り直し。中山くんは距離をとったが、彼は激痛に耐え、躍動感は多少削ぎ落とされていた。
彼はそれでも強気な態度で、両手を広げ、ほら打ってこいとばかりにあえてスキを見せる。五十嵐くんが突進してくるのを見計らい、野良ネコばりのジャンプで上空から面を狙った。しかし、五十嵐くんはその下をヘッドスライディング気味にくぐり、身体をひねりながら空中に浮かぶ中山くんのけつをひっぱたいた。
「ぐわああ!」
中山くんの間接は、おばあちゃん家のカエルと同じ形になり、彼はあおむけに床に倒れていた。審判が試合を一旦止めるよりも早く、スポーツマン・五十嵐くんは寝そべる中山くんのけつに向かって距離を詰め、何度も剣を振り下ろした。
「言わんこっちゃない! あーだめだ言わんこっちゃない! ほら言わんこっちゃないよー」
これまで、試合を見ていた観客は、中山くんが派手にやられる様をみて、えへへと笑っていい気なものだったが、だんだんかわいそうになってきた。
「やりすぎだぞ」
「ちょっとちょうしにのってただけじゃないかよ」
「ちょうしにのっちゃうこともあるよ。若いんだから」
中山くんは起き上がる気配を見せない。顧問の先生がようすを見に小走りで向かった。
「中山。先生だぞ」
「先生、作戦をさずけてください。全く歯がたたないです」
「とりあえず謝っちゃえよ。あと、防具つけなよ」
「ほら言わんこっちゃない!」
という悲痛な叫びが体育館に響き渡っていた。
試合前、昨年の覇者五十嵐くんは、中山くんにこう告げた。
「僕はスポーツマンとして、相手の防具を狙う練習しかやってない。君が防具をつけないとすれば、僕の剣がどこを狙うのか、僕でもわからない。それでも防具をつけないの?」
中山くんは意図的にテンションを上げ、叫んだ。
「防具なくても同じとこ狙えよ! なんて嫌なやつだ!」
「はじめ!」
開始の合図とほぼ同時に、スポーツマン・五十嵐くんの剣が一閃。彼は正確に中山くんのけつをひっぱたいた。中山くんは叫び声をあげた。
「ぐわああ!」
「はい! 言わんこっちゃない! 言わんこっちゃないよ!」
剣道では、面(おでこ)、胴(おなか)、小手(手の甲)のいずれかをひっぱたかない限り、ポイントにはならない。ましてや身体の後ろなぞ攻撃しても無意味。試合は引き続き続行されるのである。一旦仕切り直し。中山くんは距離をとったが、彼は激痛に耐え、躍動感は多少削ぎ落とされていた。
彼はそれでも強気な態度で、両手を広げ、ほら打ってこいとばかりにあえてスキを見せる。五十嵐くんが突進してくるのを見計らい、野良ネコばりのジャンプで上空から面を狙った。しかし、五十嵐くんはその下をヘッドスライディング気味にくぐり、身体をひねりながら空中に浮かぶ中山くんのけつをひっぱたいた。
「ぐわああ!」
中山くんの間接は、おばあちゃん家のカエルと同じ形になり、彼はあおむけに床に倒れていた。審判が試合を一旦止めるよりも早く、スポーツマン・五十嵐くんは寝そべる中山くんのけつに向かって距離を詰め、何度も剣を振り下ろした。
「言わんこっちゃない! あーだめだ言わんこっちゃない! ほら言わんこっちゃないよー」
これまで、試合を見ていた観客は、中山くんが派手にやられる様をみて、えへへと笑っていい気なものだったが、だんだんかわいそうになってきた。
「やりすぎだぞ」
「ちょっとちょうしにのってただけじゃないかよ」
「ちょうしにのっちゃうこともあるよ。若いんだから」
中山くんは起き上がる気配を見せない。顧問の先生がようすを見に小走りで向かった。
「中山。先生だぞ」
「先生、作戦をさずけてください。全く歯がたたないです」
「とりあえず謝っちゃえよ。あと、防具つけなよ」
コメント
おばあちゃんの家は、さぞかしのどかな所にあるのでしょうね。
コメントの投稿
トラックバック
http://hannya39.blog46.fc2.com/tb.php/183-c47657b1

